2月27日(通夜)

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  この日が来ることは解りきっていたことだ。少々唐突ではあったけれど、まぁ、そういうものなのだと、個人的に整理は付いている。

 

旅支度を済ませた祖父はどこかもう遠くにいるような顔をしていた。家の中にはまだ余韻が残っていて、明日また来れば、祖父が出迎えてくれそうな気さえしてくる。いつもの陽気な調子で。もしそうだったら、一緒に釣りに行きたい。

 

 香の煙がゆるゆると舞う。集った各々の記憶が揺蕩っているかの様に。93年間という祖父の歴史を知っている人々。私の知らない祖父の姿を知っている人々。そして、そこにいた誰もが共通して知っている祖父の姿は、明るく陽気で、はつらつとしていた。

決して他人と競わず、他人を貶めず、ただただ自分の生を楽しんでいたように思う。激動の時代を越えて生き、酸いも甘いも嗜んで、そしてその全てを前向きに楽しんでいた。その姿は孫として自慢であったし、きっとここからの旅路も楽しんでしまうんだろうと、そんな気がしている。

 

そう、分かっていた。この日が来ることは。

否応なしにこの日は来る。分かっていた。

それなのに目頭が熱くなるのは、解っていなかったのだろうか。

 

さて、明日は本当に、とりあえずの別れ。